*admin*entry*file*plugin| 文字サイズ  

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


嫁の記事にもあった通り、休暇を利用して安曇野在住のHさん一家の住まいを家族で訪れ、夏休みらしい夏休みを皆で堪能させて頂いた。Hさん、ありがとうね。

Hさんとはかれこれ10年以上も前、インド東部の山間の街、ダージリンで知り合って以来の仲。双方の伴侶も交えての久々の語らいのひと時、ふとあのダージリンで過ごした日々のことを思い出した。

ダージリン。英語で書くとDarjeeling。この街の名前はチベット語のドルジェ・リン(Dorjee Ling、"金剛洲"の意)という言葉が語源になっている。街の名前の由来になっているくらいだから、当然チベット人が多い。かつてはチベット系のシッキム王がこの辺りを治めていて、中国共産党政権によるチベットへの侵攻が始まる遥か前から、チベットの商人達はこの街や隣のカリンポンを拠点に行商を営んでいたとか。

だからって、ダラムサラのマクロード・ガンジのようにチベット人ばかりが多くいるわけではない。っていうか、いわゆる人種のサラダボウル状態。一番多いのがネパール系で、だからこの街で一番通用するのもネパール語。街の食堂で出てくるのはターリーというよりもダルバートだし、雑貨屋に行けば"Shekar"や"Kukuri"のようなネパールの煙草が普通に売っていたりもする。他には、一応西ベンガル州に属しているのでベンガル人、隣接しているのでシッキム人やブータン人、忘れちゃならないチベット人、果ては故郷の紛争を逃れてはるばる行商にやって来たカシミール人、そしてインドの平野部から、或いは世界各国から避暑と観光に訪れた旅行者達。英領時代の避暑地であったが故の上品さと、インド特有の混沌がない交ぜになった独特の雰囲気に、そこはかとない居心地の良さを感じた。

残念ながら直前までの悪天候の影響でトイ・トレインが不通となっていたため、下のシリグリという町から早朝のミニバスに乗り込み、ダージリンを目指す。果てしなく続く山道を登りつめ、ダージリンに到着したのがお昼過ぎ。目星をつけていた宿でチェックインを済ませ、腹ごしらえをし、ちょっと街を散策して再び宿に戻って来たところで、同じ宿の泊り客であるカナダ人の男性に話し掛けられた。

「観光客なんか殆ど来ないようなローカルの居酒屋があるんだ。一緒に行かないか?」

願ったり叶ったり。二つ返事で同行を希望する旨を伝える。
余談だが、このダージリンやカリンポンを中心とした西ベンガル州山間部や更にその北のシッキムは、インドにしては珍しくアルコールに対して寛大なエリアで、ちょっとした飲食店なら冷えたビールは大抵置いてあるし、小さな村の宿に滞在して運が良ければホームメイドの地酒を振る舞われたりもする。こんな雰囲気もネパールに近いとこと言えるかも。いずれにしても、酒好きにはありがたい。

斜面にへばり付くように広がる街が夕闇に呑みこまれようとする頃合いを見計らって、件のカナダ人と宿を後にする。淡い裸電球の灯りに照らされた露店をひやかしつつ、ただひたすら坂道を下る。まだかよ、といいかけたところで細い路地に折れ、その奥の古ぼけた木の小屋を指差して、陽気な口調でそのカナダ人がこう言った。

「ABCレストランへようこそ!」

古ぼけた看板には、アルファベットで確かにそう書いてある。でも、ABCって。何もそんなにセンスのない名前にしなくてもよかろうに。訝しみながら店に入ると、ネパール系の経営だろうとの予想に反して、店を切り盛りしているのはチベット人の女性達だった。
おっ、ラッキー。ネパール語は自信ないけど、チベタン相手なら言葉通じるじゃん。早速チベット語で話しかけてみると、案の定彼女達は大ウケ。この辺り、拙いながらも言葉が話せる者の強みかも。
メニューを聞くと食べ物は既に売り切れとのこと。飲み物は既製品のビールのほか、アラック(ネパール語だとロキシー)、そしてトゥンバもある。

トゥンバ!

粟や黍のような雑穀を発酵させたものを大きめのマグに満タンに入れ、そこに熱湯を注ぎ、抽出されたアルコール分をストローで飲む。ネパールでは一般的なこの酒を、ここダージリンでも飲めるなんて。俺にとってはそれだけでもう長居する理由になる。それくらいこのトゥンバという酒は旨いのである。標高の高い山間地の冷たい空気の中で啜るトゥンバは、何物にも代え難い快楽なのである。

その晩は、他の客がいなくなったその店で、チベット語で話せてトゥンバが飲めるという個人的な都合で幸せな気分に満たされながら、翌日にはカルカッタに向けて発つというカナダ人の最後の宴を共に過ごしたのだった。

そこからの日々は言わずもがな。
件のカナダ人が去った後も、ダージリンにいる間はほぼ毎晩、夜はABCレストランに足を運んだ。カリンポンやブータンのフリーゾーン(プンツォリン)、シッキムへのショートトリップから戻ればまた足取り軽くABCレストランへ。そんなこんなでABCレストランに通いつめているうち、同行者がひとりまたひとりと増え、気付けば日本人ばかり5人も連れ立って店に顔を出すようになっていた。そんな中のひとりが、今は安曇野に居を構えるHさんだったというわけ。

この店のオーナー夫婦には、当時5歳になる息子がいた。名前はテンジン。オーナーと言いつつ親父は行商に出ててほぼ不在、母ちゃんは店で働いているというわけで、このテンジンも概ね毎日顔を出す。最初の頃こそ人見知りをして寄り付きもしなかったが、日々足を運ぶうちに打ち解けるようになり、気付けばこの酒好き日本人集団のテーブルに当たり前のように一緒に座ってキャッキャとはしゃいでじゃれてくるようになっていた。で、テンジンをそのような状況に追い込んだ張本人が、Hさんだったのである。

このHさん、教員免許と保育士の資格の保持者で、旅に出る前も子供相手の仕事をしており、更にカルカッタのマザーハウスでは、ポピュラーな「死を待つ人の家」(Nirmal Hriday)の方ではなく「シュシュ・ババン」(Shishu Bhavan)と呼ばれる孤児院をボランティア先に選んだという、言わば子供相手のプロ。こっちがちょっとばかしチベット語が話せて子供好きってくらいじゃあ到底かなわない。ちょっぴりジェラシー、だけどHさんのお蔭でテンジンが懐いてABCレストランに足を運ぶのが更に楽しみになったわけで、結果オーライなんである。

諸行無常。そんな楽しいひと時にも、やはり終わりはやって来る。
ビザの期限と自分がインドでやりたいと思っていたこと(「死を待つ人の家」でのボランティア、仏蹟巡り、タブラのレッスンなど)とのバランスの関係で、これ以上ダージリンに滞在するわけにもいかなくなってきた。カルカッタへ降りる日を決め、その前夜、いつものメンツでABCレストランへと向かう。

偶然のなせる技か、その日はたまたまオーナー、つまりテンジンの親父も行商から戻って来て店に顔を出していた。幸い彼は英語の読み書きも普通にできたので、店の住所を教えてもらってそれまでに撮りためた写真を送る旨を約束。そしてその夜は、オーナー、店を切り盛りするチベタンの女性達(テンジンの母ちゃんを含む)、ネパール人の下働きのおっちゃん(この人がまたいい味出してるんだ!)、我々日本人一団、それにテンジンのオールスターズ、チベット語ネパール語英語日本語入り乱れてのバカ騒ぎである。

そんな最中、たまたま隣に座ってたテンジンに冗談半分でこう訊いてみた。おい、テンジン、俺と一緒に日本に行くか?するとテンジンは、ニヤニヤしながらあっさりこう言ったのである。

「うん、いいよ!」

アホかお前は。でも、心の底ではちょっと泣けてたりして。
で、これがそのやんちゃ坊主のテンジン。

ABCレストランのテンジン
※画像をクリックすると拡大表示されます。

ご覧の通り、当時は典型的な鼻タレ小僧だったけれど。
今頃はいい感じの立派な青年に育って、まだ見ぬ故郷に思いを馳せているのだろうか?

(青)

【またまた】
昨日、たまたま寝際に「闇の子供たち」ってゆー映画をチラ見。
テンジン君の笑顔と、映画の中のタイの女の子の眼差しがシンクロしてしまいました
ABC魅力的。トゥンバ、是非味わいたいなぁ(望)
【No title】
yui様

ようやくPCが復旧したので、今更ながらレスします。

『闇の子供たち』、俺もまだ観てはいないけど興味ありです。
やっぱね、子供の明るい笑顔が見られるってのはとても大切なことだよ。子供は虐げられてはいけないよ(大人だって虐げられていい道理はないのですが)。

トゥンバ、旨いよ~。ダージリン周辺のほか、ネパールでも呑めるので、機会があれば是非是非(簡単に言うなって?!)
この記事へコメントする















青空トランプ

Author:青空トランプ
青空トランプ:夫婦ユニット。サブメンバーに、長女コロ(中1)と長男ぐわー(小5)がいます。
そんな青空トランプを、20の質問で紹介します。

【青空☆太郎】

出身地:宇宙
職業:世界を股に挟むえせサラリーマン
趣味:最近は主に東欧の大衆音楽、例えばロマ(ジプシー)系やクレズマーの辺り
特技:誰に対してもあつかましく振舞う
好きな食べ物:カレーかラーメンか迷ってるフリをしつつ本当に好きなのは握り寿司
好きな映画:ここ最近なら間違いなく『先祖になる』だね
尊敬する人:タモリ(『ブラタモリ』復活希望)
抱きたい人:宮崎あおいちゃん(せっかく離婚したんだから俺んとこに嫁に来なさい)
神:JB、ジミヘン、コルトレーン(このチョイスに迷い無し)
永住したい場所:東北か東欧か東南アジア
1ヶ月休みがあったら:東北でボランティア&観光(まだまだ行き足りない)
3億円当たったら:1億は寄付して、残ったカネで防音設備の整ったスタジオ付きの家を建てて楽器を買いまくるね
明日死ぬとしたら:慌てて般若心経を覚える
今一番興味があるのは:クレズマーとチンドンの関係性
子供以外の宝とは:あごひげともみあげ
自分を動物に例えたら:インドサイ
相方のいいところ:他人にでも感情移入できるところ
相方の悪いところ:他人にでも感情移入しがちなところ
相方を料理に例えたら:火鍋と砂鍋が半々のやつ(仕切りは陰陽風)
世界に向けてメッセージを!:打倒風評被害!


【花札(仮)すずき】

出身地:長野県長野市
職業:主婦業を全力で。
趣味:下ネタ。
特技:落ち込むこと。
好きな食べ物:友人の旦那が作るダシ巻き卵。こないだ久々にありついた♡甘さと出汁とフワフワ具合。ケーキかよ!?安定の旨さ。嫁への愛を感じたわー。
好きな映画:『クンドゥン』『JSA』
尊敬する人:もちろんダライラマ14世。すごいオジサマですよ、この人は。
抱かれたい人:吉野寿様。せめてデートできるなら、一緒にダイアログ・イン・ザ・ダークとか行って、吊り橋効果狙いたい。
神:小林賢太郎。神と書いてけんたろうと読む。
永住したい場所:シェムリアップ、ウブドゥ、チェンマイ
1ヶ月休みがあったら:タイのビーチでぐだぐだしたい。
3億円当たったら:半分寄附、半分貯金して老後に旅しまくる。
明日死ぬとしたら:家族と美味しいもの食べて過ごします(;_:)なんか泣けてきた…
今一番興味があるのは:TED。おっさんテディベアじゃなくて、プレゼンの方のね。
子供以外の宝とは:ラーメンズDVD&文庫本コレクション。
ラーメンズ好きな女はうざい?けっ知らねー。
自分を動物に例えたら:スナフキン亜種。おさびしやま~に~♪
相方のいいところ:博識。理論的。私の支離滅裂な話をよく聞いてくれるという意味で、ガマン強いところ。
相方の悪いところ:ブログ、この半年で1個くらいしかあげてませんよ。どうしました?
相方を料理に例えたら:満漢全席。うんちく多そうだ。
世界に向けてメッセージを!:最良の母親とは、まあまあの母親である。〜児童精神科医 ドナルド・ウィニコット〜

QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。