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チベットとは全く関係がないとお思いでしょうが、まずはこんな話から。難しくて分からないって所は、ザッと読み飛ばしてくれて構わないよ。

次世代のエコカーとして注目を集める電気自動車。搭載した二次電池(蓄電池)に電力を充電し、それを動力源として走行するため、走行時に大気中への環境負荷物質の排出が全くない、というわけで、究極のエコカーとさえ言われてたりする。ま、実際には動力源となる電力の発電に火力を利用している以上、二酸化炭素を始め何らかの環境負荷物質が排出されているので完全なゼロエミッションではないんだけど、でもエンジンに比べるとモーターはエネルギー効率が良いからまんざら期待薄とも言い切れない。

で、この電気自動車の普及の鍵を握るのが、二次電池の技術開発。モノとしてはより小さく軽く、蓄電容量はより多く、そして価格はより安く、がモットー。今後何らかのブレイクスルーが起きれば話は別だけど、今のところこの二次電池の技術として有力なのが、リチウムイオン二次電池というやつで、その名の通りリチウムを使う。

独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)ってとこが不定期に出している『鉱物資源マテリアルフロー』という資料の最新版(平成19年度版)のリチウムのページを見ると、その供給元の多くをチリやアルゼンチン、米国にカナダ等、南北アメリカ大陸が占めている一方、供給量は少ないながらロシアと並んで中国の名前も挙がっている。

で、JOGMECの別のページには『Lithium Supply & Market 2009報告(その1)』という国際会合に関するレポートがあるんだけど、この中の「8.From Zhejiang(浙江省)to Zabuye(塩湖): 中国の自給自足リチウム産業への道のり」ってとこに、やたらと“チベット自治区”や“青海省”って地名が出てくるのよ。

このリチウムってやつなんだけど、主にかん水(塩化ナトリウムなどの塩分を含んだ水)から採取されるんだって。勿論海水からも取ったりするんだけど、海水よりも塩分濃度の高い内陸の塩湖からも取ったりする。チリが最大のリチウムの産地なのはアタカマ塩湖ってやつがあるから。北米ならその名もソルトレイク辺りが産地らしい。チベット高原がリチウムの産地として有望視されているのも、塩湖が多く散在するからってことのよう。上記のJOGMECのレポートで名前の挙がっているZabuye塩湖ってのは、聖山カイラス方面へ向かう二つのルート、いわゆる北回りと南回りの二本の幹線道路のちょうど中間に位置しているみたい(関連情報)。

さすがにそこまでの僻地には行ったことないけど、俺もチャンタン高原に位置する塩湖のほとりの町に一晩だけ滞在したことがある。前置きが長くなりましたが、今宵はその時のお話を。

ある年の初夏のこと。ツアーに参加せず自力での聖山カイラス巡礼を目指し独りラサを出発して10日目、奇しくもトランプすずき(嫁)の誕生日に、乗っていたトラックが塩湖のほとりの町に辿り着いた。ドライバーは漢人。ツォチェンからアリまで150元で便乗を承諾してくれた。他の便乗者は漢人ばかりが3人。

さすがに塩湖のほとりなだけあって、あたり一面真っ白で、岩塩を輸送する車が頻繁に行き来している。見た感じ町には宿兼食堂が一軒だけしか無さそう。他の便乗者と連れ立って仮の宿りを求めたところ、ちょうど4人部屋が空いているとのこと。案内されたのは埃っぽい土間の部屋で、倉庫代わりに使っているのかドラム缶が何本か置いてある。宿の主人の言い値は一人一晩15元。僻地だしまぁそんなもんかと思う間もなく、3人の漢人は値段が高いと文句を言い始め、あっという間に10元にディスカウント。棚からぼた餅とはこのことか。

ひと息ついたところで、連れ立って晩メシを食いに行く。併設の食堂は僻地にしてはそこそこマシな中華料理を出すようで、連れがいると料理をシェアして色々食べることができるのでありがたい。注文は漢人達に任せ、ふと食堂の片隅に眼をやると、年季の入ったチュパを着込み、手にした数珠を繰っている一人のチベタンの老人と眼が合った。真っ黒に日焼けした肌の中にひと際目立つ眼と歯を輝かせてこちらを見ながら微笑んでいる。何というわけでもなく、こちらも微笑みを返す。

運ばれて来た料理は可もなく不可もなく、といったものばかり。しかしながら連れの漢人達は料理に文句を言い始めた。こんな僻地だもの、マトモなものが喰えるだけでありがたいじゃない、と思い、漢人達の話の輪には加わらず、チベタンの老人に話しかけてみる。とは言え、内容は当たり障りのないものばかり。
この辺に住んでるの?この店にはメシ喰いに来たの?
だいたいが俺のチベット語のボキャブラリーなんてこんなもんである。

連れの漢人の一人が、俺と老人との会話に気付き、間に割って入ってきた。勿論この漢人はチベット語を話せるわけではないので、中国語で話に加わろうとするのだが、それを聞いてもチベタンの老人はキョトンとするばかり。そうかと思い、俺がチベット語で確認してみると、案の定この老人、中国語は全く解さないとのこと。

中国語を解さないチベタンと、チベット語を解さない漢人と、そのいずれもカタコトで話す日本人。微妙な沈黙が数分続いた。

沈黙を破ったのは、やはり漢人だった。そしてその話すことも、至極実利的な内容。
彼は俺に向かってこう言った。

「おい日本人。お前、チベット語が分かるんなら、この町に他にメシ屋があるかどうかをこのおっさんに訊いてみてくれ。」

はいはい。訊いてみるよ。よっぽどこの食堂が気に入らないんだね。
で、チベタンの老人に尋ねると、やっぱりこんな返事。

「メシ喰うとこなんざぁ、この辺じゃあここしかねぇわなぁ。」

中国語に訳してやると、漢人はガックリと肩を落とし、他の連中にその話を伝えた。そして皆一様に肩を落としていた。

老人に礼を言うと、老人の方から今度はこんな質問が。

「兄さん。日本人のあんたが、こんなとこまで何しに来たんだい?」

カンリンポチェ(カイラス)に巡礼だよ。
そう伝えると、老人は黙ったまま、満面の笑顔で右手の親指を立てた。左手では相も変わらず数珠を繰っている。

さすがはチャンタン高原、中国語なんか知ったこっちゃねぇ、ってチベタンがまだまだいるんだねぇ、と感心しつつ、その場はそれでその老人と別れた。勿論、それっきり彼と再会することはなかった。

さて。
先日の「チベットの歴史と文化学習会」の第5回目でも長田さんが紹介してたカナダの企業によるチベットでの鉱石採取計画(関連記事)に代表されるように、チベットの鉱物資源は今や世界中の注目の的。そしてチベット鉄道を始めとする交通機関の整備に伴い、それらの資源の外部への持ち出しがより容易になりつつある。

電気自動車の普及が進むことでリチウムの需要が高まり、チャンタン高原各地の塩湖への開発も進み、漢人の流入が更に加速し、チャンタン高原と言えどもチベット語だけでは暮らしていけなくなる...。

じゃあどうすればいいのかなんてサッパリ分からないんだけど、あのチベタンの老人ですら中国語を覚えなきゃ生きていけなくなるなんて、つくづくつまらねぇなぁ、と、チベット語も中国語もほとんど喋れなくなってしまった俺は、東京の空の下で今もそう思い続けている。

(青)

【No title】
私ごときでも、ずだだだっと読んでしまいました。
改めて(青)さんの文章って、すごいな~と感心だよ(うんうん)。
【No title】
yui様

コメントありがと~!
褒めてもらえると素直にうれしいっす♪

お盆の時期には俺もそっちに行くので、また呑みにいきましょ。
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青空トランプ

Author:青空トランプ
青空トランプ:夫婦ユニット。サブメンバーに、長女コロ(中1)と長男ぐわー(小5)がいます。
そんな青空トランプを、20の質問で紹介します。

【青空☆太郎】

出身地:宇宙
職業:世界を股に挟むえせサラリーマン
趣味:最近は主に東欧の大衆音楽、例えばロマ(ジプシー)系やクレズマーの辺り
特技:誰に対してもあつかましく振舞う
好きな食べ物:カレーかラーメンか迷ってるフリをしつつ本当に好きなのは握り寿司
好きな映画:ここ最近なら間違いなく『先祖になる』だね
尊敬する人:タモリ(『ブラタモリ』復活希望)
抱きたい人:宮崎あおいちゃん(せっかく離婚したんだから俺んとこに嫁に来なさい)
神:JB、ジミヘン、コルトレーン(このチョイスに迷い無し)
永住したい場所:東北か東欧か東南アジア
1ヶ月休みがあったら:東北でボランティア&観光(まだまだ行き足りない)
3億円当たったら:1億は寄付して、残ったカネで防音設備の整ったスタジオ付きの家を建てて楽器を買いまくるね
明日死ぬとしたら:慌てて般若心経を覚える
今一番興味があるのは:クレズマーとチンドンの関係性
子供以外の宝とは:あごひげともみあげ
自分を動物に例えたら:インドサイ
相方のいいところ:他人にでも感情移入できるところ
相方の悪いところ:他人にでも感情移入しがちなところ
相方を料理に例えたら:火鍋と砂鍋が半々のやつ(仕切りは陰陽風)
世界に向けてメッセージを!:打倒風評被害!


【花札(仮)すずき】

出身地:長野県長野市
職業:主婦業を全力で。
趣味:下ネタ。
特技:落ち込むこと。
好きな食べ物:友人の旦那が作るダシ巻き卵。こないだ久々にありついた♡甘さと出汁とフワフワ具合。ケーキかよ!?安定の旨さ。嫁への愛を感じたわー。
好きな映画:『クンドゥン』『JSA』
尊敬する人:もちろんダライラマ14世。すごいオジサマですよ、この人は。
抱かれたい人:吉野寿様。せめてデートできるなら、一緒にダイアログ・イン・ザ・ダークとか行って、吊り橋効果狙いたい。
神:小林賢太郎。神と書いてけんたろうと読む。
永住したい場所:シェムリアップ、ウブドゥ、チェンマイ
1ヶ月休みがあったら:タイのビーチでぐだぐだしたい。
3億円当たったら:半分寄附、半分貯金して老後に旅しまくる。
明日死ぬとしたら:家族と美味しいもの食べて過ごします(;_:)なんか泣けてきた…
今一番興味があるのは:TED。おっさんテディベアじゃなくて、プレゼンの方のね。
子供以外の宝とは:ラーメンズDVD&文庫本コレクション。
ラーメンズ好きな女はうざい?けっ知らねー。
自分を動物に例えたら:スナフキン亜種。おさびしやま~に~♪
相方のいいところ:博識。理論的。私の支離滅裂な話をよく聞いてくれるという意味で、ガマン強いところ。
相方の悪いところ:ブログ、この半年で1個くらいしかあげてませんよ。どうしました?
相方を料理に例えたら:満漢全席。うんちく多そうだ。
世界に向けてメッセージを!:最良の母親とは、まあまあの母親である。〜児童精神科医 ドナルド・ウィニコット〜

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